赤穂緞通ができるまで

材料の準備

赤穂緞通を製作するには、まずは材料の準備から始まります。緞通に使用する材料は、糸・染料・糊。糸は基本的には綿紡糸の10番手で、これを経糸・緯糸・耳(縁)糸・挟せ糸・耳巻糸にわけます。

  • 経糸(たていと)

    綿糸10番手を11本撚ったもので、1畳大の緞通で約1015メートルとなるがこれを糊付けし、乾燥させて使用します。

  • 緯糸(よこいと)

    綿糸10番手を9本揃えたもの。1畳大の緞通で約700メートル、糊付けし、湿ったまま用います。

  • 挟せ糸(はせいと)

    綿糸12番手を24本そろえたものを1束として使用する。藍・茶・紅の植物染料で染めたが、今は色変化の少ない化学染料で染めたものを使用している。1畳大を織るには約2300メートル必要となります。

  • 耳(縁)糸

    同番手糸を110本撚ったもの。1畳大でも6メートル必要、色は織り柄に合わせます。

  • 耳巻糸

    挟せ糸と同種の糸で耳巻にまいて使用します。

  • 粳米・糯米の粉を半分ずつ混ぜ、これを煮て作る、1畳大で約4合使用します。

道具の準備

次に道具ですが、赤穂緞通の織道具は少ないと言われています。

  • 織機

    高機あるいは横機ともいう水平機であり、構造は反物用の高機と同じです。他にも立て組みの緞通の織機もありますが、赤穂緞通には水平機を使います。

  • 握り鋏

    普通の握り鋏の刃部を反らせて、挟せ糸の不要部分を摘みます。筋摘み、地摘み、仕上げ摘みに都合のよいように改良したもの。鋏の切れ味が作業の効率に大きく影響しますので、非常に大切なな道具の一つです。

  • 綜台(へだい)

    糊付けした経糸を乾燥させる綜のことで、たすきがけの要領で約1015メートルの糸をかけ、日光にさらして乾燥させます。

  • 横棒

    長さ約50センチ、幅約5センチの竹板に緯糸を巻いて緯糸を通す時に使用する道具。

  • 耳巻

    挟せ糸を巻き、緞通の耳(縁)を経糸に巻き付けるときに使います。

  • 敷伸し台

    織り終わった緞通を張り付け最終寸法合わせるための板。

機拵え

出典:赤穂市立美術工芸館 田淵記念館発行 企画展図録赤穂緞通Ⅱより
  1. 経糸に糊を揉み込み、固く絞ります。
  2. 綜台(へだい)に湿った状態の経糸を八の字にへり、数時間天日で乾燥させ、乾燥したら輪になった糸を1ヶ所で切ります。
  3. それが終われば、織り機に経糸をセットします。
  4. 経糸は約2.5mを200組(1組2本)1000m分をしっかりとセットしていきます。

織成

出典:赤穂市立美術工芸館 田淵記念館発行 企画展図録赤穂緞通Ⅱより

織成は緯糸に糊を揉みこむところから始まります。

緯糸(よこいと)は挟せ糸(パイル糸)をしっかり固定するために湿った状態で用います。機拵えを済ませた機に、足元のペダルを使いながら緯糸を通し筬(おさ)を打って耳糸を抜き、挟せ糸をはせます。赤穂では、織込み糸を結ぶことを『はせる』と呼びます。絨毯のはせ方にはペルシャ結びとトルコ結びがありますが、赤穂緞通はペルシャ結びを採用しています。これを20段ほど繰り返し、次工程の摘みをおこなう。

1畳敷きで、挟せ糸は長さ3cmで、はせ1段に200組 385段なのでおよそ2300m必要です。

摘み

この『摘み』、特に『筋摘み』こそが赤穂緞通最大の特徴です。織成を終えると、握り鋏で文様の輪郭に沿うように色の境目に溝をつけていきます。筋摘みをすることで文様を立体的に見せることが可能となり、また曲線や斜線を使ったものも製作することができるのです。

赤穂緞通は筋摘みだけではなく、厚さを均一にするための『地摘み』で面を揃え、最後に『仕上げ摘み』として筋摘みと地摘みを繰り返します。摘みをすることによりデザインの文様がはっきりし、長年使用しても型崩れしにくくなります。この工程は、制作時間の半分以上を占める大変重要で地道な作業です。

仕上げ

出典:赤穂市立美術工芸館 田淵記念館発行 企画展図録赤穂緞通Ⅱより

経糸の始末をし、隣り合う経糸同士を丸結びし、結び目ぎりぎりのところで糸を切り揃えます。緞通を機から降ろすと、裏面が表面になるように板に釘で打ち付け、じょうろで水を打って1日天日干しを行います。この『敷伸し』をすることで緞通の大きさを定型に整えるとともに、糊を浮きだたせて挟せ糸を固定し、緞通に張りを与えることができます。